黒やぎの(てくてくわくわく 街道ウォーク)番外編

ふとした事から街道ウォークの付き人になった黒やぎのひとりごとです。ルピナス主宰の(てくてくわくわく 街道ウォーク)(http://kaz-mt-wisteria.hatenablog.com/)とあわせて見てくださいね

東映映画「大いなる驀進」を見た

5時に目覚めたので、衛星放送の番組表を見たところ、1960年制作の東映映画「大いなる驀進」が放映時間になったので、ゆっくり見せてもらった。

中村嘉葎雄佐久間良子・中原みとみ・三国連太郎・久保菜穂子・花沢徳衛小沢栄太郎、等々の方々を見ることが出来た。当然のことながら、みな、若い。くろやぎの生まれたころですからねえ。

舞台は寝台特急さくら(東京→長崎)当時の国鉄全面協力でロケが行われている。丸ノ内側で中村嘉葎雄(列車給仕さん)と佐久間良子(いまでいうOLさん)がもこもこ言い争っているところから始まり、旧丸ビルや国鉄本社などさりげなく映る。まだ建築基準法で高さ31m制限のある頃で、高層ビルはない。空が広い。

16時35分に発車するさくら、○○党の代議士(とても偉そうにしていて俳優さんが上手い)と秘書からあやしいやくざまで、沢山の人が乗り込む。新婚さんが主要駅で乗り込み、みんな会社の同僚が万歳三唱と歌で見送る。いいねえ、プラットホームは人で一杯。50年後、寝台特急が夜行バスや飛行機に負けて、時代遅れになって、ホームはひとがまばら、乗客3割くらいで廃止になるなんてとても思えないよね。

時々、先頭からの風景が映る。六郷川の鉄橋シーンがあり、川崎生まれの私はとても嬉しいですね。

東映の映画ですから、何といってもアクション、新藤兼人の脚本はとてもよく出来ている。薬を飲んで死のうとする大学教授、たすける医者の小沢栄太郎下関駅ではやくざ同士の殺傷事件、一方の持っていたチャカ(拳銃)が故障中で刺される。

一番困ったのは台風19号に遭遇したさくら号、三原駅の先で線路に軽い土砂崩れ。岡山から非電化区間で、SⅬのⅭ62が牽引しているのですが、機関助手の天才的な目の良さと勘で大雨の中急停車。保線区の二人のおじさんだけでは間に合わない。車掌長の三国連太郎、給仕の嘉葎雄をはじめ、食堂車の男性クルーたちも土砂の撤去作業に手伝い、彼らの白い服は土で汚れる。何しろ福岡県の実家に帰る娘さん(母危篤の連絡を受けて急いでいる)、翌日14時までに長崎に血清を運ぶ役の久保菜穂子、のためにも、列車を遅らせるわけにはいかない、ってんで、東映の女優さんたち、佐久間良子中原ひとみ(食堂車のお嬢さん)久保菜穂子も出て行ってぬれねずみになりながら男たちと一緒になって手伝う。

えらいなあ、女子なのに感心する、やっぱり戦争をくぐってきた人たちは違うなあ。

食堂車に何故か予備の着替えの服があって、準備がいい。佐久間良子は普通の体格だが身長と肩幅のある久保菜穂子の服も、きちんと用意されていて、サイズがピッタリである、全然つんつるてんではない。とてもよく出来ている映画だ。

下関で機関車の付け替え、関門トンネルを抜けて、架線工事中の鹿児島本線を驀進。土砂崩れでダイヤは30分遅れているのだが、下関、博多、終着の長崎、到着時間を示すホームの大時計はきちんと30分ずつ遅くなっている。さすが日本国有鉄道である。

ハハキトクの娘さんも間に合う。地上駅ですぐ改札口だった博多駅。駅弁を売るように「博多織は~いかがですかあ。博多人形は~いかがですかあ」という売り子さんの姿が映っている。そうなんだよね。夜中だった大阪や岡山、広島以外、どこでも駅弁などの売り子さんの姿が映っている。各駅の停車時間は駅弁を買いに行けるくらいで、当時の時刻表を見ると名古屋2分、大阪3分、岡山は機関車の付け替えで5分、広島も5分、下関4分、門司4分、博多は後ろ6両切り離しで5分。下関と門司は岡山同様に機関車を取り換えるが4分。昔の鉄道マンは仕事が早いなあ、特急だから特別配慮なんでしょうねえ。

海沿いをSⅬに引かれながら走る20系客車の姿がとても美しい。

佐久間良子は、愚図で(この仕事辞めたい)などと言っている嘉葎雄に向かって、車掌長の三国に言われた業務命令を渋る姿を見ると(三原駅まであなたが行ってらっしゃい)と尻を叩き、自分も雨の中を作業を手伝い、ルックスはどう見ても東京のお嬢さんにしか見えないのに、気合が入っていて、さすが東映の女優である。嘉葎雄はすっかり興奮して、この仕事は辞めない、長崎に着いたら結婚しようなどと口走るところがいい。

この映画、タイトルだけは知っていた。むかし、小学校の同級生、鹿子木くんに借りて読んだ鉄道ジャーナルという大人向けの鉄道雑誌に(鉄道を舞台にした映画の中では一番である)と小さなコラムが書かれていた記憶があった。

見てよかった。

5時に目覚めてよかった。

超、鉄道マニアの記事すみません。最後までお読みいただきありがとうございます。